芝浦工業大学 芝浦工業大学大学院 工学マネジメント研究科(専門職大学院) 資料請求
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第1回 文理融合を夢見る
児玉 文雄(教授/工学マネジメント研究科長)
「MOT基礎論」「産業創出戦略」
1964年東京大学工学部機械工学科卒業、1974年工学博士(東京大学)。埼玉大学・大学院政策科学研究科教授、科学技術政策研究所・総括主任研究官、ハーバード大学/スタンフォード大学・客員教授、1994年から東京大学・先端科学技術研究センター教授、経済工学研究センター長を歴任し、2003年芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科長、東京大学名誉教授。吉野作造賞、科学技術庁長官賞を受賞。
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  修士論文が有力誌に掲載され、華々しくデビュー
佐藤 先生は東大工学部機械工学のご出身で、博士号も工学博士を取得されています。いつ頃から今のご専門に通じる研究を始められたのでしょうか?
児玉 意外かもしれないけど、大学院修士課程の時から文理融合のテーマで研究していたんですね。僕がまとめた修士論文は、システム工学の手法により、クレーン作業者の教育訓練カリキュラムに関する問題を分析したもので、この論文は、当時、アメリカで発刊されたばかりの学会誌『Management Science』に掲載されました。
佐藤 修士論文が世界の一流雑誌に掲載されたというのは画期的ですね。
児玉 画期的だったかどうかはともかく、「オリジナリティの高い研究をやれば、世界の有力雑誌に論文を載せられる」という自信につながったことは間違いありません。当時の日本の強さは技能者の強さにあり、技能を科学的に分析する研究は、日本はもちろん、アメリカでもやられていなかった。『Management Science』に論文が掲載されて以来、経営学だろうとMOTだろうと、怖いものがなくなった感じがします(笑)。オリジナルでありさえすれば、世界に通用することがわかったからですね。
佐藤 なぜマネジメントに興味を持たれたのでしょうか?
児玉 子どもの頃から文科系にも興味を持っていて、いずれは文科系と理科系を両方やりたい、つまり文理融合のテーマをやりたいと考えていたから、ごく自然に今の研究分野に入っていったわけです。高校の頃得意だったのは、物理と歴史と英語。変な組み合わせでしょ?
佐藤 当時の東大工学部には、マネジメント系の先生がいらしたのでしょうか?
児玉 当時、マネジメントは文科系の学問と思われていたので、基本的にはいなかったですね。だから全部独学だし、日本語の本はないから、英語の本や論文ばかり読んでました。
 
研究スタイルは工学部的
佐藤 先生が一人前の研究者になられて以降の研究テーマの歩みに関してお聞かせください。
児玉 僕の研究テーマは、おおむね、時代の流れに合わせて変化してきたと言うことができます。例えば、一人前の研究者になりたての頃は、産業政策が日本でうまく機能していた時代だったこともあり、科学技術政策の分析がメインの研究テーマでした。ところが、1980年代になると、個々の企業の業績は、産業政策よりも技術戦略の良し悪しに大きく左右されるようになります。こうしたこともあり、イノベーションプロセスそのものを研究対象に据えるようになったわけです。この時期の代表作が、『Science』に掲載された「Technological Diversification of Japanese Industry」という論文ですね。
Scienceの表紙写真
児玉先生の論文が掲載された『Science』の日本特集号。日本の技術力が世界から注目を集めていた時代に出版され、児玉先生はこの論文で日本企業に特有の「技術の多角化」を分析した。
佐藤 『ハイテク技術のパラダイム』で吉野作造賞を受賞されたのもこの時期ですか?
児玉 1991年です。この賞を受賞できたのは大きかったですね。吉野作造賞は、社会科学関係の書籍を対象にした賞ですし、文理融合を目指していた自分にとっては感無量でした。工学部出身者が受賞したのは私が初めてだったという話も聞いています。
『ハイテク技術のパラダイム』の写真
吉野作造賞を受賞した『ハイテク技術のパラダイム』(中央公論社、1991年)。同書は児玉先生のこれまでの研究成果を集大成した本で、受賞の吉報は、ハーバード大学ケネディスクールで客員教授を務めている時に届いたという。
佐藤 先生が工学部で学んできたことは、研究にどの程度役立っているのでしょうか?
児玉 技術は、個々のミクロな現象から出発して、それを一般化、普遍化、マクロ化するのが一般的です。それに対して、社会科学系の学問は、多かれ少なかれマクロから出発する。そういった意味で僕の研究スタイルは、どちらかといえば工学部的なんです。まず事例があって、それを定量分析などして一般化、普遍化し、セオリーを導き出す。もちろん、工学部で学んだ手法をツールとして用いることができるという側面もありますが、工学部で学んできたことは単なるツール以上に役立っていると思ってます。
後編