高価な材料や複雑な回路を用いることなく、「メタマテリアル」で高性能マイクロ波発振器の試作に成功

通信工学科の田中愼一教授は、高価な部材や複雑な回路を用いることなく、高性能なマイクロ波発振器を実現する基本技術を開発しました。
気象観測や航空管制などに用いられるマイクロ波レーダーやマイクロ波基幹通信網システムは、無線インフラとして今日のIT社会を支えています。しかし、発振器をはじめとするマイクロ波システムの基幹部品は、性能向上を図ろうとすると、回路の製造コスト増大や複雑化につながることが課題となっていました。

このたび田中教授は、特異な電磁波特性を持つ「メタマテリアル※」をマイクロ波発振器に適用することで、低コストかつ、発振器の性能向上が可能となることを示しました。今回開発した回路設計手法は、マイクロ波システムに使われる他の多くの基幹部品の低コスト化や開発スピード向上につながることが期待されます。

※メタマテリアル…電磁波が通過する物質を特定の回路で模擬した人工物質の総称。負の屈折率など自然界の物質にない電磁波特性を有する。 

発振器の位相雑音とレーダー性能の関係
メタマテリアルを適用した試作発振器
メタマテリアルを適用した試作発振器

1.社会的課題・背景

気象・航空・防衛分野の各種レーダーシステムや大容量・長距離伝送が可能なマイクロ波通信システムは、社会の根幹を支える無線インフラとして常に技術革新による性能向上が求められています。これにともない、これらのシステムを構成する機能部品は、回路のコスト増大や複雑化につながることが課題となっていました。

2.研究の概要

マイクロ波レーダー/通信システムにおいて、発振器は、周波数ゆらぎ(位相雑音)をどこまで抑制できるかによってシステム全体の性能が左右される基幹部品の一つです。従来、この周波数ゆらぎを抑制するためには、高品質な部材を使用したり、トランジスタを多数用いる複雑な回路構成にしたりせざるを得ませんでした。その要因の一つに、「周波数と波長は反比例する」という波の基本原則があります。この原則が、電磁波の柔軟な制御を困難にしていました。
田中教授は、電磁波を操作することで自然界には存在しない特性を持たせた疑似物質「メタマテリアル」を回路中に適用。回路内での電磁波の通り道の一部をメタマテリアルに置き換えることで、電磁波の波としての性質そのものを最適に「設計する」ことを可能にしました。その結果、従来の10分の1の価格の部材で、高性能な9GHz帯発振器の試作に成功しました。
 

3.研究のポイント

「メタマテリアル」技術は、光学の分野や、アンテナを中心としたマイクロ波の受動素子回路への応用が研究されてきています。今回は、発振器という能動素子回路にメタマテリアルを用いてその特異な性質を利用し、周波数ゆらぎの抑制が確認できたことで、メタマテリアルを用いたマイクロ波回路設計技術の新たな可能性を示すものとなりました。

4.今後の展開

今回の技術は、発振器だけでなく、増幅器やフィルタなどマイクロ波通信システムにおける他の基幹部品にも応用することができます。本技術が実用化されれば、社会インフラとしてのマイクロ波通信システムの低コスト化・高性能化に貢献する他、その技術を携帯電話などの製品に展開することも可能になると考えられます。
今後は、新しい技術である「メタマテリアル」の効果的な適用方法の研究を続けるとともに、企業などと連携し技術の実用化を目指していきます。 

 

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