Scientific Reports(Nature社)に掲載

芝浦工業大学(東京都港区/学長 村上雅人)システム理工学部電子情報システム学科の中井豊教授(計算社会科学)は創価大学岡田勇准教授、ウィーン大学の佐々木達矢研究員との研究チームで下記の研究発表を行い、2月2日(日本時間)にイギリスの学術誌 Scientific Reports (Nature社)に論文が公開されました。
人々がお互い助け合うことによる協力的な社会を実現するためには、非協力的な人を利さないように他者を適切に評価することが必要です。そこで、どのようにその人が協力的な人か否かを決めるかが問題となりますが、これまではベストな評価法が見つかっておらず、評価の仕方の精緻化が進められてきました。
具体的には、悪い人に協力することや協力しないことに対してどう判断するかが議論の分かれるところでしたが、中井教授らは、この議論の分かれるケースに対してあえて評価せず、評価を現状維持しておく「留保」(Staying)という考え方を導入し、数理モデルを用いて、留保が最も社会における協力行動を促進することを発見しました。

1.助け合いの連鎖:「間接互恵性」

 寄付をする、ボランティアを行う、献血をするなど、人は自分が負担になるにも関わらず他人を助ける利他的行為を行います。そして、このような利他的行為(協力)が連鎖していくことを「間接互恵性」といいますが、直接の見返りがないため、協力が連鎖することは当たり前ではなく、何故、間接互恵性が生まれるのか謎となっています。それを解くカギとして、コミュニティ内で生まれる他者への評判(あの人は「よい人」だ「わるい人」だと評価すること)が注目されてきましたが、間接互恵性を形成・維持できる具体的な評価の仕方について、良い人や悪い人を助けたり助けなかったりすることに対してどう良いあるいは悪いと評価すべきか、世界中で研究されてきました。

2.他者の良し悪しをどう評価するか

 ①~④の各行動に対して、いい人を助けることはいい行動であり、いい人を助けないことは悪い行動である、と評価すべきことは既に確立していました。一方で、悪い人を助けるか助けないか(以下の③④のケース)について、最も優れた評価の仕方が見つかっておらず、より複雑な評価の仕方が探求されてきました。

3.あえて評価をしない「留保」という考え方

 中井教授らは、この③④について評価をしない「留保」という考え方を導入して、数値計算、シミュレーションを行ったところ、最も協力行動の促進につながることを示しました。これまで間接互恵性研究が「評価ルールの精緻化」を進めてきた研究動向とは逆の「評価しない」という発想が頑健に協力行動を促す効果があることになり、「微妙な場合にあえて白黒つけない」という日本的な発想ともつながり、社会科学的に興味深い結果となりました。現在、ネット上で相互評価が盛んに行なわれていますが、本研究が、最適な社会評価システムのための基礎的な知見となることが期待されます。


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